名曲喫茶「ライオン」

先日、名曲喫茶「ライオン」という喫茶店を訪ねてみた。
渋谷道玄坂のラブホテル街の中にあり、行きにくい場所ではあるが、一度訪ねる価値はあると思う。
入り口の扉からは店内を覗くことができず、入りにくく感じたが思い切って入ってみた。
普通の喫茶店だと思い、ちょっと笑顔になってるまま入店したのだが、店員さんは至って真面目そうな顔で、恐く感じた。店内はとても静かで緊張感が張り詰めている。
店員さんに二階もありますよと言われ、二階に登った。

座席の配置が変わっていてすこし驚いた。飛行機の機内のように、多くの座席が全部同じ方向を向いているのだ。連なっている座席は二人分がほとんど。お一人様か、少人数のお客さんを想定しているんだなと感じた。
なんとか三人お互いの顔が見える座席を探して席についた。壁には誰かの肖像画が掛けてあった。ドヴォルザークのように見えたが、髭が無かったので、誰かわからなかった。
店内は緊張感に溢れていて、お喋りするのは憚られたので、ひそひそ話で話をしてた。

席についたときは、ショパンかなにかの曲が流れていた。曲名はわからなかった。とても良いスピーカー。その次もショパンマズルカか何かが流れてきた。
そうか客層はこういう受けの良い曲を好む方達なのかなと思った。
ショパン舟歌の冒頭ように、どーーーんというピアノの音したので、またそういう曲なのかなと思ったら、変な感じ。ドビュッシーのようなお道化た要素があるかと思えば、ラヴェルのようなお洒落な感じ、Jazzっぽい要素、そしてスクリャービンのような前衛的な音の作り、それらがすべて混ざったような曲。なんという曲なのか気になったが、結局わからなかった。店員さんに訊こうかと思ったが、なんとなく躊躇って結局訊いていない。
その後も、聴いたことがある曲もあれば、初めて聴く曲も流れてきた。やっぱり客層はクラシックマニアの人が多いんだろうな。それも、ただいろんな曲を知っているわけではなく、音楽を深く理解しているお客さん。

女性二人や三人のお客さんもいた。よくあのホテル街を通って来るなあと思った。三人なのにお喋りはせず各人で安らいでいるようだった。常連なのかな。

一人で来店して聴いたらいい時間を過ごして休むことができるんだろうなあと感じた。あまりお喋りできないということで、何曲か聴いたのち、お店を後にした。
とても、重々しい雰囲気で、歴史を感じるお店だった。